サブカルworkshop

『僕は僕を好きになる』~僕たちは乃木坂46をもっと好きになる~

 昨年の『しあわせの保護色』以来、10ヶ月ぶりのCDでのシングルリリースとなる、乃木坂46の26枚目のシングル『僕は僕を好きになる』。毎回注目のMVだが、今回も面白い作品ばかりなので書きたいと思う。白石麻衣卒業後、乃木坂はどこへ向かっていくのか。今回のMVはshort ver.になるのだろうか。

 

僕は僕を好きになる(監督 奥山大史)

  

 表題曲。センターは山下美月
 MVの内容としては、アイドルとしての自分と、プライベートの自分の境界線が曖昧になっていく中で、仲間と共に前に進んでいく姿が描かれている。この内容を皮肉と読み取るかどうかは、観た人の解釈にゆだねるとして、「芸能人が消費される」ってどういうことなのだろうか。
 ある芸能人がテレビなどでヒットしたパターンを、色んな番組がこぞって使い、そのパターンが飽きられる頃には、その芸能人が持つ別の側面や新たな可能性に誰も興味を持たなくなってしまうことなのか。
 世間のイメージを演じ続けることで、いつしか本当の自分を見失っていくことなのか。
 どっちにしろ、求められたものがいつしかその人のすべてであるかのようになってしまうことなのだろう。
 今日では、俳優にしろ、アーティストにしろ、その人の表現しているものよりも、その人の内面・人柄が重視される傾向にあるように思われる。それは、握手会などでファンとの距離感が近くなったアイドルや、テレビに出てくる芸能人よりも親しみやすさを感じられるYoutuberの存在が大きく影響しているのかもしれない。
 しかし、そういったアイドルやYoutuberから受ける印象が、100%その人のすべてというわけではない。ファンに見せる顔、友人に見せる顔、家族に見せる顔、すべてが同じ人などほとんど存在しないだろう。あなたに見せる顔は、その人の持つ仮面の一つに過ぎない。
 だからこそ、その人の内面がどうであれ、作品の中で表現する姿を純粋に評価される、そんな世の中であってほしいなと切に思う。まあアイドル応援してる奴が何言ってるんだって言われるかもしれないけど……。
 少なくとも私はMVの内容を皮肉だとは思わない。それでもこういったことを考える機会ぐらいは与えてくれているのだとは思う。

冷たい水の中(監督 山戸結希)

  

 堀未央奈のソロ曲。
 昨年、突然MVが公開され、その中で堀が卒業を発表する、という異例の展開に、多くのファンが衝撃を受けたと思われる。監督は『ごめんね ずっと・・・』や『ハルジオンが咲く頃』のMV、堀の初主演映画『ホットギミック』を手掛けた山戸結希。
 終盤、堀がセーラー服を脱ぎ捨てるが、やっぱりアイドルは若さ、フレッシュさが重視されるのされるのだろうか(とはいえ、堀はまだ24歳だが)。これまでのMVの再生回数から見ても、新しく入った4期生が注目されているのがわかるが、すぐ若い子に切り替えるファンの気持ちがわからない。そもそも本当にそういう人がいるのかどうかもわからないけど。
 個人的に堀の演技が好きなので、彼女が卒業後ドラマや映画で見られるのを楽しみにしておく。

Wilderness World(監督 東市篤憲)

  

 『世界で一番 孤独なLover』にしろ『夏のFree & Easy』にしろ、なぜ乃木坂は都会的でありながらも、都会に溶け込まず、違和感を出すことができるのだろう。とはいえ、交差点でのシーンは、本当の渋谷ではなく、栃木県にあるオープンセットで撮影したらしいが。
 武器を手にするメンバーの姿は『バレッタ』のMVを彷彿とさせるが、今作では(一部制服を着たメンバーはいるものの)スタイリッシュな出で立ちで、グループとして成熟した様子を見られる。
 個人的ツボは、おもちゃで遊んでいるようにしか見えない爆弾魔・与田祐希、瞳に虚無を宿した殺し屋・堀未央奈、後継者を育成する高山一実

口ほどにもないKISS(監督 頃安祐良)

  

 アンダー曲。監督曰く、ウェス・アンダーソン監督と『小さな恋のメロディ』へのオマージュらしいが、無知なため、どこら辺がオマージュになっているのかは全くわからない。

  しかし、北野日奈子鈴木絢音が駆け落ちするという設定だけでも、ファンとしては満足なのではないだろうか。阪口珠美の出番は、センターにしては少なめだが、北野と鈴木とババ抜きするシーンでわかる阪口の想いや、最後の「バイバイ」でしっかり印象を残している。
 また、『教場Ⅱ』の撮影のためか、ほとんど出番のない樋口日奈も、「駆け落ち請負人」という役柄だけで爪痕を残すのはさすが。

Out of the blue(監督 N2B)

  

 4期生曲。
 昨年は『I see...』で話題となった4期生だが、今作では新4期生も参加し、終始枕投げをしている。そして、エンドロールではダンスシーンというご褒美もある。
 VFXなどでそれなりにお金がかかっていそうな印象があるが、本気で枕投げするメンバー(特に目に殺意を宿した早川聖来、清宮レイ)の好演によって、決して見劣りしない映像に仕上がっている。
 個人的には、最後のダンスシーンが始まる前の、疲れ切った表情をした他のメンバーに対して、枕投げに参加しなかった遠藤さくらと北川悠理の、生き生きとした表情が好き。

 

終わりに

 今回いまいちMVの再生回数の伸びが悪い気がするが、今年も乃木坂46が面白いものを見せてくれるのを楽しみにし、本当に面白ければ存分に楽しみたいと思う。
 OGもどんどん活躍の場を広げているので、現役、OG含めて「乃木坂46」の活動を見守っていきたい。