サブカルworkshop

2020年7・8月に観た映画たち

 全くブログを更新できていないので、少しでもブログを継続していくために毎月観た映画を紹介するという記事を上げていくつもり。今回は新型コロナウイルスによる自粛明けの7・8月に観た映画を紹介する。多少のネタバレは勘弁。

今日から俺は‼劇場版

 自分は福田雄一ファンなので満足の出来。とはいえ、福田作品って映画である必要はないよな、というか映画ではないよなと思っていて(『銀魂』はそんなことないかな)、だから福田監督の映画が公開される度に必死こいて観てる自分がバカバカしく思えてきたりもしてる。(現在放送中の『親バカ青春白書』は素晴らしいドラマだと思う)
 そろそろギャグシーンにあまり無駄な尺を割いてほしくはないなとは思うが、今度公開される『新解釈 三國志』も相変わらずのノリっぽいので、あまり期待せずに観に行く予定。

水曜日が消えた

 上の記事に書いていることがすべて。

のぼる小寺さん

 自分にとっては『怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のルパンイエローでお馴染みである工藤遥の初主演映画ということで観た。
 ボルダリングに夢中な女子高生・小寺さんと、彼女の姿に魅かれて自身も変わろうとする同級生たちの姿を描いた青春映画。特に大きなイベントが起きるわけではないが、ただ目の前の青春を懸命に生きる高校生たちの姿に愛おしさを感じる。

日向坂46ドキュメンタリー映画 3年目のデビュー

 日向坂46初のドキュメンタリー映画。「けやき坂46」での自分たちの存在意義に悩む姿、「日向坂46」に改名して華々しいデビューを飾って輝く姿を描いた作品。
 ドキュメンタリー映画としての完成度は正直微妙。ただ出来事をなぞっていくだけの内容で、これまでの乃木坂46ドキュメンタリー映画と比べるといささか不満が残る。収穫があるとすれば、紅白歌合戦の初出場が決まったことをメンバーに伝えたときの今野義雄の言葉ぐらいかな。

コンフィデンスマンJP プリンセス編

 前回の『ロマンス編』に比べて騙しのトリックはシンプルであるが、「偽物が本物になる」というストーリーに惹きつけられた。コックリがフウ家当主の隠し子であること、ダー子がコックリの母親であること、これらはどちらも嘘であるが、前者が「本当」になったのに対し、後者は「本当」にはならなかった。そのことでダー子はコックリのことが羨ましいと思ったのかもしれない。そういったダー子とコックリの対比が、映画第2弾として前回との差別化が図られているのが素晴らしい。

僕の好きな女の子

 又吉直樹のエッセイが原作。『火花』『劇場』を観たことも読んだこともないのに、なぜかこの映画を観ようとは思った。
 感想としては微妙。主人公の「僕」が好きな女の子に気持ちを伝えずに友人として付き合っていくというのは好みではあるが、その描き方がどうも合わなかった。主人公はウジウジし過ぎだし、ヒロインも確信犯にしか見えない。
 そして、最もガッカリしたのがラストである。主人公は脚本家で、ヒロインとの出来事をがっつりドラマで描いており、それを観た友人たちはヒロインをボロクソに貶す。こういったある種のメタ構造が形成されているのに、そもそもヒロインとの出来事が主人公の妄想だったとさらにメタが重ねられても、「じゃあ今まで見せられてたものは一体何だったんだ?」という気持ちになってしまう。
 そもそも又吉の作風が合わなかったのかもしれないので、一回『劇場』を読んでみようかなとは思う。

ぐらんぶる

 頭のおかしい、面白い映画でした。こんな頭を空っぽにして楽しむ映画は世の中には必要だと思う。ただ色んなパロディを詰め込んだ前半に比べて、後半はやや失速ぎみだったとは思う。

思い、思われ,ふり、ふられ

 同じ恋愛映画としては先程の『僕の好きな女の子』よりも断然好みの作品。心の移り変わりがやや性急だと感じたが(これは自分に恋愛経験がないからかもしれない)、瞬間瞬間を懸命に生きていく少年少女の姿が心に刺さった。
 また、映像が本当に綺麗。特に、終盤の由奈が理央に再び告白するシーンの、風や光の捉え方が良き。

青くて痛くて脆い

 素晴らしい青春映画。キラキラなど一切ないが、誰もが抱える青さ、痛さがこれでもかと詰まってる。
 孤独だった主人公がヒロインとの出会いによって自分の居場所を見つけるも、あることがきっかけで居場所を失ってしまう。主人公は自分から居場所を奪った者に復讐を行うというストーリー。とはいえ、居場所を失うきっかけは下らないといえば下らないが、本人にとっては切実な問題である。自分のような人付き合いが下手な人間には十分理解できる話だが、「え?そんなことで?」と拍子抜けする人も少なくないのかもしれない。
 もしかしたら主人公の拗らせっぷりが自分と重なって辛く感じるかもしれないが、痛さをどう乗り越えるかも描かれていてぜひ最後まで観てほしい作品。
 完全に余談だが、この映画が好きな人はBase Ball Bearの『光源』というアルバムも気に入るじゃないかなと思う。

          

2020年夏ドラマ視聴状況

月曜日

・SUITS/スーツ2

 そもそもシーズン1を観ていなかったため未視聴。

火曜日

 ・竜の道 二つの顔の復讐者

 復讐劇の連ドラは苦手なため未視聴。

・私の家政夫ナギサさん

 最初はエプロン姿の大森南朋に癒されていたが、別に観なくてもいいかとなって視聴中止。

水曜日

・刑事7人

 毎年恒例のため今回も視聴。

・私たちはどうかしている

 浜辺美波横浜流星目当てで1話視聴したが、やりたい設定、描きたいシーンのために物語を動かしている気がして、視聴継続するかはかなり怪しい状況。

・働かざる者たち

 好きなタイプのドラマであるはずなのだが、どうにも微妙。あまり心を動かされないというか、伝えたいことはわかるがなぜか心に届かない、そんなドラマ。

木曜日

・未解決の女 警視庁文書捜査官

 こちらもシーズン1を観ていなかったが、刑事ものだったら途中から観ても大丈夫と判断し、1話を視聴したものも視聴継続は怪しい。

・アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋

 若干石原さとみ演じる主人公の理想がただの押し付けになってないかとハラハラする部分はあるが、面白いし西野七瀬もいるので視聴継続。

・おじさんはカワイイものがお好き。

 「好きなものを好きでいる」というテーマのドラマは『トクサツガガガ』にも通じるが、それプラス「おじさんを愛でる」という要素で新たなドラマとして成立している。もちろん視聴継続。

金曜日

・MIU404

 豪華キャストに脚本・野木亜紀子とかなりの注目作であったが、やはり面白かった。期待を大きく超えた出来に大満足。いつかはこのドラマ単独でブログを書いてみたいと思う。

・女子グルメバーガー部

 1話出演の大原優乃佐々木美玲目当てで視聴。しかし、店員兄弟の心の声のやり取りがスベリ散らかしていたため視聴継続は断念と思われたが、2話の出来が良かったため視聴継続。それ以降の出来は取り立てて良いわけではないが許容範囲内である。

土曜日

・未満警察 ミッドナイトランナー

 これも『私たちはどうかしている』と同様の理由で視聴継続を断念。こちらに関しては特に目当てのキャストがいないため特に未練なし。

・妖怪シェアハウス

 ツイートで述べた通り。とはいえ、毎週観れば観るほど沼にハマってる自分がいる。水戸黄門とかのお約束のある勧善懲悪もので、それプラスぶっ飛んだコミカル演出があって、毎週の楽しみになっていることは確か。妖怪は数多く存在するので、シリーズ化も夢ではない?

恐怖新聞

 とりあえず最後まで観るつもりではあるが、正直ホラーとしてこれってどうなんだろうか?ホラーをあまり観ないからまともな判断ができない。

日曜日

半沢直樹

 シーズン1を観たときから自分には合わなかったので、今回も未視聴。

・親バカ青春白書

 福田雄一ファンであるため当然視聴。脚本家が監督本人ではないからだろうか(とはいえ脚本統括ではあるが)、これまでの作品に比べ無駄な長回しのシーンがなかったため、とても観やすく面白かった。

【感想】『水曜日が消えた』

中村倫也が1人7役に挑戦

 約三ヶ月振りのブログとなってしまいました。ドラマ『映像研』の感想を書きたいとは思っても、学生生活で忙しい上に自分の怠惰な性格もあって、中々更新できませんでした。そんな中、この映画に出会ったことで、今回久々にブログを書きたいと思いました。では、映画の感想に行きたいと思います。ネタバレ注意です。


(あらすじ紹介) 幼い頃の交通事故が原因で、曜日ごとに人格が入れ替わる「僕」。そのうち几帳面で真面目な人格の「火曜日」は、好き勝手振る舞う他の人格の代わりに、家の掃除、担当医への定期報告など、損な役割を引き受けている。本が好きだが、近所の図書館は火曜日が休館日。彼は火曜日の世界に閉じ込められていた。いつも通りの一日を過ごし、来週の火曜日に備えて眠りにつくのであった。しかし、次に目覚めたのは翌日の水曜日であった。初めての図書館、司書との恋と、知らなかった世界の出会いに胸を躍らせていたが、次第に「火曜日」の身に異変が訪れる。




  あらすじからも分かると思いますが、この映画は主演の中村倫也の1人7役を見るものではなく、基本的に「火曜日」という1つの人格の日常を見るものとなっています。映画の魅力の一つとして、やはり主演の中村倫也の演技が挙がります。几帳面で真面目な「火曜日」は、他の曜日の好き勝手な行動や退屈な日常に愚痴を漏らしながらも、淡々と一日をこなしていきます。しかし、水曜日になっても人格が入れ替わらなかったとき、今まで知らなかった世界に目を輝かせてまるで子どものようで、初めて入った図書館の司書に恋をする様子も非常に可愛らしい。それだけでも十分に見ていられるのですが、その後出てくる「月曜日」の演技や、ラストの他の曜日の演技が、声のトーンだけでなく、表情も全然違うもので、まるで別人のようでした。同じ「僕」でもそれぞれの曜日に異なる日常があるということに説得力があります。

 次に魅力はVFXを用いた映像演出だと思います。監督の吉野耕平は、『君の名は。』にCGクリエイターとして参加し、次の時代を担う気鋭のクリエイターとして注目されています。そのVFXの一つとして、「火曜日」の見る夢で、割れた鏡に映る一匹の鳥が何匹にも分かれるというシーンが何度か出てきます。最初はその意図が分からないのですが、物語が進むにつれてその意図が分かるようになります。そして、それによって、最後「僕」の身に何が起こったかも言葉でなく映像で説明されます。そこが非常に気持ちがいい。

 そもそもこの映画全編にわたってあまり説明がされないというか、観客のためにわかりやすく説明するのは冒頭の「僕」の設定だけです。登場人物のやり取りは、本編が始まる前からの日常の続きになっていて、変な説明台詞もなく、映像も併せて彼らの日常を覗いているような感覚になります。

 とりあえずこの映画、多重人格ものですが、そこまでホラーやサスペンス要素はありません。映画のメッセージは「毎日を大切に生きる」です。他の曜日がそれぞれ才能を持っているのに対して、「火曜日」は自分は地味な存在と卑下します。そして、次第に人格が統合していき、「僕」が「僕」じゃなくなることに「火曜日」は怯えます。しかし、分散された人格は本来の「僕」の一部だと思います。それは幼少期のシーンからも分かると思います。幼少期の「僕」が抱えている箱の中には、絵の具やリコーダー、テニスラケット、将棋盤にスコップと、それぞれの曜日の人格に関わるものが入っています。最後、「僕」は7つの人格を保つことを選択しますが、それぞれの曜日にとって大切なものを守ることで物語は閉じます。

 そして、エンドロールも最後まで観てほしいです。エンドロールでは、各曜日の人格の付箋でのやり取りが見られますが、このやり取りが非常に可愛らしい。魚のイラストのみで意図をほとんど読み取れない「日曜日」や相変わらず損な役を引き受ける「火曜日」と、中村倫也の演技や映像演出が魅力の映画でもありますが、最後にはキャラクターを楽しむ要素もあり、そこも魅力として成り立っています。

 ちなみに、映画を観た後は、映画の脚本を基にした小説もぜひ読んでみてください。映画の内容を補完しながらも、映画とは異なる展開、結末が見られます。やや理屈っぽいと感じる所もありますが、映画を楽しめたならば十分楽しめる作品になっていると思います。

【感想】ドラマ『映像研には手を出すな!』第壹話

 ドラマ放送開始前、原作が面白いのは勿論のこと、アニメの完成度があまりにも高かったがために、実写のハードルが高くなるという結果に。ただでさえ実写化に対する風当たりは強いというのに。そんな中ドラマの予告映像が公開。

この映像を観て、実写の評価の分かれ目の一つとして、浅草みどり役である齋藤飛鳥の演技が挙げられるのは確実だと思った。個人的には原作を読んだ時の浅草氏のイメージは齋藤飛鳥の演技に近いのだが、アニメの伊藤沙莉の演技がしっかりイメージを塗り替えてくれた。だからこそ、齋藤飛鳥が実写独自の浅草氏のイメージを打ち立てることができるかどうかが、成功のカギになるのではないかと。

ドラマ放送開始!

 実際に始まってみると、これまでの心配はただの杞憂だった。最高の実写化だった。浅草氏のイメージどころか、ストーリー展開までもが実写オリジナルになるとは。それでも決して原作の軸を壊さず、しっかりと押さえるべき要素を押さえていることに、原作への愛とともに、制作側の工夫を感じた。
 まず映像研3人の演技は、原作をベースにキャラクターを自分たちのものにしている。齋藤飛鳥演じる浅草みどりはよりコミュ障をこじらせつつ、話し方からは好きなものに対するピュアな思いが感じられる。山下美月演じる水崎つばめはカリスマモデルの説得力が増し、それでも嫌みのない魅力的なキャラになっている。梅澤美波演じる金森さやかは金稼ぎに対する貪欲さは変わらず、原作よりも感情は熱を帯びたものになっており、人間らしさというものが強まっている。
 また実写オリジナルの展開については、映像研以外にオリジナルの部活動・研究会の登場する。これにより、舞台となる芝浜高校のカオスを表現している。今回では、普段応援されない立場の人たちを応援する応援部、野球部の内部分裂により生まれた外野部・内野部。そして、これらの活動を管理することで、大・生徒会の強キャラぶりを感じることもできる。実際、書記のさかき・ソワンデは原作から飛び出したかのような存在感であり、斬り込み隊長の阿島九は原作からキャラが補強されておりドラマオリジナルの活躍を見せる。
 一方で、映像研の3人も原作のエピソードを準拠しつつ、独自の動きを見せる。例えば、ドラマでは、水崎氏が川に飛び込んでびしょ濡れになったことで、浅草氏、金森氏とともにコインランドリーへ行く。それに対し、原作では、浅草氏が水崎氏を担いだために、持っていたいちごミルクがこぼれて水崎氏はびしょ濡れになる。しかし、実際に女性が人一人担ぐのは簡単なことではなく、漫画だからこそできる表現である。だからこそ、実写ではドラマオリジナルの展開をつくることでそれを解決した。また、水崎氏がGHQもとい黒服から逃げるシーンでは、警備部・応援部までもが参戦し大混乱になる。これにより、応援部の存在をしっかり回収し、ただ原作を再現するのではなく、原作ファン・アニメファンにも新たな刺激をもたらしている。
 原作改変とは別の話になるが、黒服に追われている水崎氏を見て、浅草氏がスケッチブックにアイデアを書くシーンで、すべて書き終わってからその中身を見せるのではなく、途中過程も映っていて、そこら辺凝ってるなと思った。

カイリー号テイクオフ!!

 コインランドリーにて、浅草氏と水崎氏はお互いにスケッチブックを見せ合う。水崎氏の描いたメカを目にした浅草氏は創作意欲を爆発させる。想像の世界は現実世界とシームレスに描かれており、そこでのメカの設定の増強を線画により表現され、完成したカイリー号はアニメーションではなくVFXによって誕生する。まさか深夜ドラマでここまで完成度の高いVFXが観られるとは思わなかった。映画制作を前提とした強みを感じた。3人が最強の世界を目撃したシーンには不覚にも涙が出そうになった。
 カイリー号をアニメーションで表現しないことに関してやや否定的な意見が見られるが、これは解釈の違いによるものだと思う。個人的には、浅草氏の最大の目的は最強の世界を「描く」ことではなく、「存在させる」ことではないのかと思う。つまり、浅草氏にとってアニメーションは目的を達成するための手段ということである。もちろん、浅草氏はアニメーションを愛しており、決して金森氏のような金儲けの手段としてフラットに見ているわけではない。そもそも原作では浅草氏の幼少期の夢は冒険家であった。団地に引っ越した時には、団地中を探検し独自の設定を思いついてはノートに書き留めていた。このときの浅草氏の最強の世界に対するイメージは実写寄りだったのでないかと思う。そして、そのような世界を冒険したいと夢見ていたのではないかと思う。しかし、ある日の『未来少年コナン』との出会いにより、最強の世界を冒険するという夢は、最強の世界をアニメーションで描くという形に変わったのではないかと思う。だから、想像の世界が現実世界とシームレスであることも、カイリー号をアニメーションで描かないことも、間違った演出ではなく、独自の解釈によるものだと自分の目には映った。

これが最強の世界

 色々と綴ったが、これは個人の感想であり、第壹話を観て自分に合わなければそれは仕方のないことである。ただし、観ないで否定するのだけは勘弁してほしい。確かに、原作・アニメに比べて、実写の映像研3人のビジュアルは可愛くなっている。そのせいで魅力がなくなったという意見も見られる。しかし、この作品がビジュアルで語るものではないことをみんな理解しているはずだ。アニメの銭湯のシーンで性的な描き方をしていないと盛り上がっていたじゃないか。ドラマで乃木坂メンバーは自身の可愛さを振りまいていない。彼女たちは純粋に『映像研』の世界を表現している。原作を単にトレースせずに、実写なりの表現で最強の世界を描こうとしている。だからこそ一度でいいから観てほしい。細工は流々!仕上げを御覧じろ!

『しあわせの保護色』~乃木坂46の集大成にして、新章のはじまり~

乃木坂46の25枚目のシングル『しあわせの保護色』が3月25日に発売されます。今作もカップリング曲含めて計5曲のMVが制作されました。毎回趣向を凝らした映像作品が作られており、私が乃木坂46を好きな理由の一つでもあります。特に今回は白石麻衣の卒業シングルということもあり、乃木坂のストーリーというものが強く感じられる作品が多く、これからを期待させてくれるものばかりなので、ぜひみなさんに紹介したいと思います。おそらく発売日を迎えるとカップリング曲のMVがshort ver.になると思うので、早めにチェックしてください。

しあわせの保護色(監督 池田一真

25thシングル表題曲。コンセプトは卒業する白石麻衣を見送るパーティー。壁や鏡などのセットはおそらく後ろで人が動かしていると思うのですが、そういった所も含めた一発撮りのような手作り感、いい意味で肩の力を抜いたような作風が、曲調にピッタリ合っていて、何度も観たくなります。その上、所々メンバーの素の笑顔が見られたり、花束を受け取った白石が涙をこらえる様子が見られたりと、作品を超えた一つのドキュメントを見ているようで、白石の卒業をより一層実感させます。

アナスターシャ(監督 伊藤衆人)

2期生曲。新型コロナウイルスの影響で中止となった2期生ライブの代わりに行われたSHOWROOMの生配信でお披露目となったMV。監督は2期生を研究生時代から撮ってきたということもあり、ファンなら背景が理解できるシーンが散りばめられており、グッとくるものがあります。しかし、それ以前に作品としての完成度が高い。千葉県で撮影されたらしいのですが、ロケーション、衣装、撮り方から異世界のような雰囲気がありますし、最初のサビでメンバーのダンスが重なるシーンなど、すごく気合が入っており、乃木坂のMV史上屈指の傑作だと思います。ぜひともフルのままで残してほしい。

じゃあね。(監督 湯浅弘章

白石麻衣の最後のソロ曲。作詞は本人によるものであり、メンバーが作詞するのはこの楽曲が初めてです。西野七瀬の最後のソロ曲「つづく」のMVと同じ監督が手掛けていますが、「つづく」では卒業後の未来が描かれているのに対し、本作では卒業するまでの軌跡が描かれています。それも白石だけでなく、彼女を応援してきたファンのこれまでもフィクションでありながらも描かれているというのが、白石からファンへの感謝の気持ちの表れのように感じられます。

I see...(監督 神谷雄貴(maxilla))


4期生曲。楽曲がSMAPっぽいということで、Twitterで「SMAP感」がトレンド入りするなど予想外の方向で話題となった本作。これまでの4期生曲とは全く雰囲気が異なるパーティーチューンですが、すごく彼女たちに余裕が見られるというか、成長具合が半端じゃなくて、乃木坂の安泰な未来を本気で期待させてくれます。今回話題になったことからよりファン層が広がるのではないかという期待もしています。

毎日がBrand new day(監督 横堀光範)


3期生曲。3期生曲のMVが制作されたのは「トキトキメキメキ」以来約1年ぶり。4期生が入ったことで、まず楽曲が大人っぽくなって変化を感じられます。監督は「新しい世界」「キャラバンは眠らない」を手掛けた方で、光を効果的に使っており、フィルムのような質感が、映像としてキャンプとマッチしています。花びらが舞う中でのメンバーのソロショットは目を奪われます。ジェンガを本気で楽しむ様子や、キャンプファイヤーを囲んでダンスを楽しむ様子といった、素の感じもちゃんと絵になるというのが乃木坂の凄みというか魅力のように感じられます。

まとめ~乃木坂46のこれから~

今回白石麻衣の卒業シングルでありながらも、単に感傷的になるのではなく、ちゃんと前を向いてこれからを踏み出していく決意というものを、作品全体を通して感じられました。また、「I see...」が話題になったことで初めて乃木坂46に目を向けた人も少なくないと思います。これからも乃木坂46は変化しつつも、大事なものを守り続けながら前に進んでいくと思います。乃木坂46が本当の意味で国民的アイドルになるのが楽しみです。

『映像研には手を出すな!』がメディアミックスの良い参考資料になるかもしれないという話。

『映像研には手を出すな!』プロジェクトから目を離すな!

 大童澄瞳の漫画を原作としたTVアニメ『映像研には手を出すな!』がNHKで絶賛放送中ですが、4月からは実写ドラマ、5月からは実写映画が控えており、『映像研』はこれからもっと注目されることでしょう。
 しかし、TVアニメの完成度・注目度の高さから、実写化に一抹の不安を抱えている人も少なくはないでしょう。その上、主要メンバーを乃木坂46=アイドルが演じるということで拒否反応を示す人もいるでしょう。自分は、乃木坂メンバーによって実写化されるというニュースから原作を読み始めましたが、「面白い」と同時に「これは実写化無理だろう」というのが感想でした。
 ただ、映画の公式Twitterにアップされる画像から、また毎週放送されるアニメから、『映像研』に関する一連のプロジェクトが単に面白い作品を届けるだけではなく、漫画・アニメ・実写の表現の違いを伝える意義あるものではないかと、私は考えるようになりました。このため、本記事では、原作漫画の魅力とは何か、なぜアニメがここまでの注目を浴びているのか、そして実写化に何を期待しているのかについて、私なりの考えを綴っていきたいと思います。

漫画でアニメを表現すること

 まず原作漫画の魅力とは何でしょう。魅力を語る上で、第1話の水崎ツバメが描いたメカを浅草みどりとともにブラッシュアップするシーンを挙げたいと思います。そこでは、メカの完成図が設定と一緒に見開きで示されます。これを初めて見たとき、幼少期に読んだ『かいけつゾロリ』シリーズを思い出しました。別に本編に絡むわけではないが、こういった細かな所にどうしても心が惹かれてしまう。そして、ここから浅草氏の「最強の世界」がどのように形になっていくのかが楽しみで、漫画全巻を購入する決意をしました。
 また、本編を通してアニメ制作のリアルが描かれていますが、これはプロデューサーを務める金森さやかの存在による所が大きいです。浅草氏、水崎氏の大衆には伝わりにくいこだわりを金森氏が改善させたり、制作だけにとどまらず、いかに多くの人に作品を届けるかといった宣伝についても描かれています。このように、単に高校生がアニメを作るというよりは、プロとして作品に向き合うというストーリーが、実際のアニメ制作の過程を窺うことができて、大変興味深いものになっています。

アニメ化による原作世界の補強・拡張

 次にアニメが注目される要因についてですが、その一つとして「アニメオリジナルのエピソードによる原作エピソードの補強」が挙げられます。
 例えば、7話「私は私を救うんだ!」冒頭での水崎氏の幼少期のエピソードがまさにそれです。水崎氏は、祖母が器に残ったお茶を庭に撒いたときの液体の動きに魅了され、祖母に同じことをするよう何度もせがみます。また、子役の養成所とみられる所で様々な動作を観察しデッサンします。これらのエピソードによって、原作にもある「私は『アニメ』じゃなくて『アニメーション』を作りたい」という水崎氏のセリフの意味を視聴者はより理解しやすくなります。そして、お茶のエピソードは、こちらも原作にある銭湯で浅草氏が何度も水をかけられるシーンとリンクする形になります。このように、アニメオリジナルのエピソードが、原作エピソードを掘り下げる形で違和感なく織り交ぜられているのです。
 他には、1話の浅草氏たちが黒服の男から逃げるシーンや、8話の映像研とロボ研が生徒会の制止を振り切って上映会を宣伝するシーンにも、アニメオリジナルの展開が盛り込まれています。ぜひ原作漫画と比較してみてください。

 また、浅草氏の頭の中にある空想世界の描かれ方が面白くて、水彩画のようなタッチによって現実世界と区別された描かれ方がされています。原作の方では特にこのような描き分けはされていませんが、この手書きのような描写によって未完成感があり、登場人物と視聴者が同じ目線に立って空想世界を楽しめる仕掛けになっているように感じられます。

実写への期待

 最後に、実写化について言及していきたいと思います。今回、ドラマ、映画を手掛けるのは英勉監督。近年の作品では『賭ケグルイ』があり、これは概ね成功といえる部類だと思います。他には、『ぐらんぶる』、『東京リベンジャーズ』の年内の公開が予定されており、実写化作品を今年だけで3作も手掛けており、これまで以上に注目を受ける監督になると考えられます。そして、映像研の3人を演じるのは乃木坂46のメンバーで、浅草氏を齋藤飛鳥、金森氏を梅澤美波、水崎氏を山下美月が担当します。
 みなさん色々不安だと思います。その上、実写化することが発表されたとき、原作者、監督、プロデューサー、キャストのコメントが揃いもそろって「どうなるかわからない」でした。しかし、これはまさに「最強の世界」を描こうとしている浅草氏そのものではないかと。原作自体が現実の人間が架空の世界を描く物語であり、これこそ実写化すべき作品なのではないかと私は思います。そもそも漫画とアニメだって表現方法が違うわけで、それは原作を読んでる人だったらわかることだと思います。それならば、実写も異なる方法で『映像研』を表現するだけだと思って、どっしり構えていればいいんだと思います。原作よりも可愛くなった映像研3人を愛でればいいんです。
 決して投げやりになっているわけではありません。実際の所、かなり期待しています。というのは、今年公開された英監督の『前田建設ファンタジー営業部』が素晴らしい作品だったからです。

この映画は実在する企業がマジンガーZの格納庫を設計するというストーリーで、架空のものに真剣に取り組む人たちの姿が描かれており、どことなく『映像研』と重なる所があります。だから、この人なら見事に実写化してくれるのではないかと期待しています。確かに架空の世界をどう表現するのかという不安材料がありますが、これこそ「細工は流々!仕上げを御覧じろ!」(浅草氏)ですね。
 これが成功すれば、漫画、アニメ、実写の表現の違いが手に取るようにわかると思います。そして、それぞれのファン層が境界を越えて混じりあっていくのではないかと期待しています。手始めに4月からのドラマを楽しみにしましょう。